ヤンマーとNTT Com、水稲栽培でのメタンガス削減とJ―クレジット創出における新たな取り組みを開始
~環境負荷の低減と生産者の収益向上を両立するサステナブルな農業モデルを構築~
ヤンマーマルシェ株式会社(以下 ヤンマーマルシェ)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)は、生産者の新たな収益源となるJ―クレジット創出に関する取り組みを開始します。
2023年3月1日にJ―クレジット運営委員会より「水稲栽培における中干し期間延長」の方法論(※1)が策定されました。これを受け、ヤンマーマルシェが契約する一部の生産者(以下 パートナー生産者)が栽培する多収・良食味米「にじのきらめき」を対象に中干し期間の延長を行い、J―クレジットの認証取得に取り組みます。また、営農支援やお米の販売・流通支援を行い脱炭素と生産者の収益向上を両立する新たな農業モデルを構築することで、持続可能な農業に向けた支援を強化します。なお、本取り組みはJ―クレジット制度のプロジェクト登録および認証取得に向け申請予定です。
1. 背景
温暖化をはじめとする世界的な気候変動が課題となる中、日本においても2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、CO2排出量の削減に向けたさまざまな取り組みが加速しています。温室効果ガスのなかでもメタンガスは気候変動に与える影響が大きく、メタンガスの温室効果はCO2の約25倍とされています(※2)。また国内のメタンガス排出量の約45%は稲作に分類されており、その抑制によるインパクトは非常に大きいとされています。
加えて、農業においては生産者の減少、生産・消費の変化などの課題にも直面しており、持続的な食料システムの構築が急務となっています(※3)。
このような課題に対し、ヤンマーマルシェとNTT Comは水稲栽培の中干し期間を延長することにより、メタンガスの排出量削減や創出されたJ―クレジットの流通を通じた新たな農業モデルを構築します。NTT Com が提供するIoTセンサーやアプリを使用してJ―クレジット申請における生産者の管理負担を軽減するとともに、営農支援と収穫したお米のブランディング支援をヤンマーマルシェが行うことで、生産者のビジネス拡大に貢献します。
2. 本取り組みの概要
「水稲栽培における中干し期間延長」の方法論では、中干し期間をその水田における直近2年以上の実施日数の平均より7日以上延長することで、延長をしなかった場合に想定される温室効果ガス排出量をJ―クレジットとして申請することができます。今回、中干し期間延長のエビデンスをとるため、水位などのデータをNTT ComのIoTセンサーで取得し、管理します。
<仕組み図>
(1)IoTセンサーによる情報取得とJ―クレジット申請の一元化
水田にNTT Comの「MIHARAS(R)」(※4)を設置し、地温・水位・水温・湿度・気温などのデータを取得します。取得したデータはNTT Comが提供するアプリに自動的に連携され、アプリからJ―クレジットの申請までを一気通貫で完結します。
複雑なJ―クレジット申請業務を簡便化するだけでなく、IoTセンサーで情報を取得することで近年課題となっているグリーンウォッシュ対策(※5)にも貢献します。
(2)営農支援とお米の販売・流通支援
中干し期間を延長すると土壌条件などによっては米の収穫量が落ちるほ場もありますが、ヤンマーマルシェが収穫量の確保および品質の向上にむけた営農支援を行います。また収穫したお米は、環境に配慮した食料を求める顧客ニーズの高まりを受け、ブランド化に取り組むことで販売・流通を支援します。
(3)J―クレジットの流通
本取り組みで創出したJ―クレジットはNTT Comが市場への流通を行い、農業由来のカーボンクレジットの活性化を目指します。
3. 各社の役割
ヤンマーマルシェ:フィールド提供、営農支援、お米のブランディング、販売・流通支援
NTT Com:IoTセンサーの提供、J―クレジット申請アプリの提供、J―クレジットの販売先検討
4. 今後の展開
今後は本取り組みを全国へ展開し、2030年度までに約1万tのCO2排出量削減を目指します。得られたJ―クレジットを全国に広く流通させることで農業由来のカーボンクレジットを活用した新たな農業モデルの構築を行い、同時に地域活性化などの社会課題の解決を実現していきます。また、「MIHARAS(R)」などのIoTセンサーで取得した情報を活用し、生産者への営農支援も強化します。
さらに、本取り組みで収穫したお米は株式会社NTTドコモが運営するdショッピングでの販売も検討します。
(※1):「水稲栽培における中干し期間延長」の方法論は稲作の栽培期間中に水田の水を抜いて田面を乾かす「中干し」の実施期間を従来よりも7日以上延長することで土壌からのメタンガスの排出量を抑制する方法論のことです。
(※2):全国地球温暖化防止活動推進センター「地球温暖化係数(GWP)について」を参照しています。
https://www.jccca.org/faq/15950
(※3):農林水産省「みどりの食料システム戦略」を参照しています。
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/
(※4):「MIHARAS(R)」はNTT Comが提供する農業用IoTセンサーです。
https://www.ntt.com/business/services/miharas.html
(※5):グリーンウォッシュは実態がないにもかかわらず虚偽のデータを提示し環境に配慮していると見せることです。
* 「MIHARAS」はニシム電子工業株式会社の登録商標です。
<ヤンマーグループの脱炭素社会の実現に向けた取り組み>
ヤンマーグループでは、持続可能な社会を目指し、「GHG排出量ゼロの企業活動を実現する」「循環する資源を基にした環境負荷フリーの企業活動を実現する」「お客様のGHG排出ネガティブ・資源循環化に貢献する」という3つの課題への挑戦を柱にした「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」を推進しています。本取り組みは、「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」の一環で実施しており、取り組みを通じてブランドステートメントに掲げる“A SUSTAINABLE FUTURE”を実現します。
詳しくは https://www.yanmar.com/jp/about/ygc/ ご覧ください。
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