全国116店舗のペットショップを運営するAHB、 ペット業界における動物福祉向上のため アドバイザリーボードを設置
=獣医師・弁護士・保護活動家等と共に、 数値規制を繁殖・販売の適正運用に生かす取り組みを=
株式会社AHBは、「動物と人間の幸せな共生社会の実現に貢献する」ことをミッションに事業運営をしています。近年、弊社の事業でもある犬猫の販売に関しては、繁殖に用いられる一部の犬猫の不適切な飼養管理が問題視されています。2019年の動物愛護管理法の改正で、動物取扱業の規制強化の一環として、数値基準(※1)の具体化等が定められました。弊社は企業責任として、この機会が業界全体にとって、より動物福祉の観点に寄り添った事業運営に繋がるよう、動物愛護・福祉に関する専門家を招聘しアドバイザリーボードを設置しました。
(※1)本リリース内で使用される「数値基準」「数値規制」という文言は、動物愛護管理法の飼養管理基準に関する省令で定められる遵守基準のことを指します。
■社会的な背景と弊社の想い
犬猫の生体販売をめぐって問題視されている不適切な飼養管理を改善に向かわせるため、2019年には動物愛護管理法が改正されました。犬猫のケージや運動スペースの広さ、スタッフ1人あたりの飼養管理頭数などを定めるための数値基準が設けられることになり、2021年6月より施行されます。
我々のような命に接する事業は、「より良い事業運営とは何か?」を常に自問し、変わらなければなりません。昨今のペットショップへの厳しいご意見や数値規制等の法改正も、我々の在り方、生体販売の在り方を問い直す契機となります。犬猫の幸せと産業の持続可能性が両立される社会を、企業という立場から実現していくべきだと感じております。
■アドバイザリーボード設置背景
2019年の動物愛護管理法の改正では、繁殖・販売等の生体を扱う事業者への数値基準も設けられました。ガイドライン策定を含め現在進行形で議論は続いており、多くの意見が存在します。しかし、客観的な基準として判断できる数値が生まれたことは、改善意欲のある繁殖・販売事業者の後押しとなります。弊社もブリーディング事業者と共に積極的に対応していく所存です。
数値規制への対応だけでなく、企業責任を果たすには、様々な課題への対応が必要です。弊社の社会責任を果たす今後の取り組みについて議論する際、弊社内で完結することは不適切であると考えました。そこで冒頭の話に戻り、動物愛護・福祉・共生に関して造詣が深い6人の専門家の皆様を招き、アドバイザリーボードを設置いたしました。
すでに2020年12月、2021年3月と2回実施し、取り組みに関して、専門家の皆様から多角的な視点から忌憚のないご意見をいただいております。今後も具体的な策に落とし込みながら、ときに変化を重ねながら、試行錯誤しつつ前進できるように取り組んでまいります。
アドバイザリーボード詳細はこちら: https://www.ahb.jpn.com/press_releases/6199
第1回会議のご報告はこちら : https://www.ahb.jpn.com/press_releases/6208
■まずは「パートナードッグ&キャットプログラム」
数値基準には、スタッフ1人あたりの飼養管理頭数の制限も盛り込まれています。例えばブリーディング事業者ではスタッフ1人あたり繁殖犬は15頭まで、繁殖猫は25頭までとされました。本基準に関しては改善意欲のある事業者の対応期間として、段階的な施行が決まり、完全施行は3年後となりました。基準を超えた数を飼養している一部のブリーディング事業者では、スタッフ数を増やす、もしくは、繁殖用犬猫数を減らす必要があります。適正飼養の推進に必要不可欠な取り組みであり、同時に、減らす犬猫の行く先を確保することも事業者の責任です。ただ、その犬猫のセーフティネットが整っていないことも事実です。
弊社はその責任がある一企業として、数値基準の反映による適正飼養の推進と、受け入れ先を必要とする犬猫を新たな家族と繋ぐ取り組みを両立させ、完全施行の3年を待つのではなく、課題解決・協働によって積極的な社会実装を目指していきたいと考えております。
こうした取り組みを進めるため、アドバイザリーボードの専門家の皆様の知見も踏まえながら、まずは繁殖を引退する犬猫やハンデのある犬猫にも新しい家族を見つけるための、パートナードッグ&キャットプログラムを全国で展開いたします。
プログラム詳細はこちら: https://www.ahb.jpn.com/partner/
皆さまの忌憚ないご意見を伺いながら、より犬猫や人にとって豊かな社会になるよう尽力できればと考えております。本件に関する取材・ご意見もお気軽にお寄せいただけると幸いです。
■私たちの覚悟とご挨拶
株式会社AHB 取締役 長谷川 龍太
■アドバイザリーボードの専門家一覧
浅野 明子 氏
弁護士(高木國雄法律事務所)、愛玩動物飼養管理士1級、ペット法学会会員
[プロフィール]
早稲田大学法学部卒業。1999年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主に、相続等一般民事事件及びペットに関する法律相談等を扱う。現在、東京家庭裁判所家事調停委員、農林水産省獣医事審議会委員、環境省中央環境審議会動物愛護部会臨時委員、公益社団法人日本愛玩動物協会理事などを務める。主な著書に、『ペット判例集』、『知って得する!ペットトラブル解決力アップの秘訣38!』(ともに大成出版社)など。
[コメント]
従前ペットの法律問題といえば悪徳業者と消費者保護が主でしたが、飼い主の責務として終生飼養義務の明文化(平成24年動愛法*改正)、自治体の取り組みの増大など、様々な問題もあることがわかってきました。動物に関係する全ての人に、動物が終生適正に飼養される環境を整える義務がある。そんな時代になってきたのではないでしょうか。取りこぼされる命がなくなり人も動物も幸せに暮らせる社会。その一歩になるよう本取り組みには期待しています。特に、販売業のノウハウを生かして、犬猫の個性と飼い主の飼育能力を考慮したマッチングをして頂くこと、繁殖方法改善への還元もして頂くことを期待しています。 *動物の愛護及び管理に関する法律
井島 七海 氏
株式会社PETOKOTO 執行役員 兼 OMUSUBI事業責任者
[プロフィール]
2018年同社入社。企業理念「人が動物と共に生きる社会をつくる」の体現を目指し、CS、事業推進に従事。保護犬猫マッチングサイトOMUSUBI(お結び)の運営を担い、2019年には審査制の保護犬猫マッチングサイトで日本一の規模に成長。その他メディアでの情報発信や支援企画も積極的に実施。現在は同社の執行役員兼OMUSUBI事業責任者として事業推進に従事。休日はシェルターボランティア活動を行う。
[コメント]
課題・意見が錯交するペット流通市場においては、一番の当事者である犬猫が直接声を上げることができません。声なき命が尊重される社会システムの構築を目指すとき、必要なのは社会実装を推進する地道な「調整」と「挑戦」だと考えています。元来、保護活動と生体販売は水と油に例えられてきました。しかし対立・批判姿勢からは根本解決に向けた議論が生まれにくいです。業界健全化へ模索の一歩を踏み出す本プログラムが、行政、事業者、保護活動者、飼養(検討)者はもちろん、社会全体で生体販売の在り方を議論する機会になればと期待しています。非常に難しいテーマではありますが、私自身もアドバイザーの皆さまと全力で挑戦する所存です。
今本 成樹 氏
新庄動物病院 院長
[プロフィール]
北里大学卒業、東京大学農学部生命科学科大学院研究生課程を経て、新庄動物病院開業。日本獣医学会(近畿)において犬の遺伝性疾患の研究で優秀研究褒賞を3度受賞。東日本大震災では、警戒区域内の動物救護を国からの許可を得て行う。その様子は多くのメディアで報道されアメリカのNational Evacuation Conferenceで講演。平成26年に全日本アマチュアボクシング社会人選手権にて優勝。
[コメント]
獣医師になる前から多くの犬や猫が、保健所でその最後を迎えていることに心を痛めていました。また、獣医師になってからは、犬や猫の特に乱繁殖が産み出す遺伝性疾患に取り組んでまいりました。さらには、東日本大震災では、現地に取り残された動物の救護の現場に身を置くことで、命の問題を強く感じることができました。それ以降、国内外で災害と動物について講演する機会を得ました。そういった中で、自分にできることを考えるようになり、自分にできることは、この様々な経験を様々な角度から役立てることだと感じました。今回のアドバイザリーボードへの参加の打診を引き受けさせていただこうと思いました。
奥田 順之 氏
認定NPO法人人と動物の共生センター 理事長、獣医行動診療科認定医
[プロフィール]
2012年NPO法人人と動物の共生センター設立。適正飼育の普及のため、犬のしつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニックを運営。2017年獣医行動診療科認定医取得。ペット産業の適正化を目指し、ペット関連企業や業界団体らと積極的に対話を行い、発刊物の監修や調査提言を行う。著書に「動物の精神科医が教える犬の咬みグセ解決塾」「ペット産業CSR白書-生体販売の社会的責任-」。
[コメント]
社会的責任(Social responsibility)とは、社会の声(Social)に反応する(response)能力(ability)と言い換えることができるでしょう。今、ペット産業は社会の声を聴き、対応することを強く求められています。本取り組みは、社会の声を、企業側から積極的に聴き、自らを変えていこうとするものだと思って参加しています。これまで交わらなかった動物愛護・共生の実践者・専門家とペットショップが、共に具体的なアイデアを練るステージにいることは大きな前進です。そして、一歩ずつでも前に進めることがアドバイザーの責務であると自覚し、ペット産業の健全な変化を加速させるため尽力していきます。
上山 琴美 氏
認定NPO法人キドックス 代表理事、社会福祉士、キャリアコンサルタント
[プロフィール]
筑波大学人間学類卒業。学生時代から非行少年や引きこもりの青年の支援活動や捨て犬の保護活動に携わり、アメリカのカリフォルニア州・オレゴン州で動物介在活動のプログラム研修を受けた後、2010年から日本で活動を開始。現在は茨城県土浦市にキドックスシェルターを、つくば市に保護犬と出会えるカフェキドックスカフェの2拠点を開設し、子ども若者と保護犬の支援活動を行っている。2012年にNPO法人化、2020年に認定NPO取得。
[コメント]
動物保護団体を10年以上運営し、営利・非営利問わず色々な企業や団体の動物福祉や産業の現場を見る中で、必ずしも全ての団体が犬猫に愛情を持ち適切に管理をしているとはいえない現状を痛感し、良い取り組みが社会的に評価され、悪徳な企業や団体が淘汰される仕組みを考える必要性を感じていました。2019年の動物愛護法の改正を機にペット業界全体が適正な方向へむかうためには、産業への批判だけではなく垣根を超えた対話を通して具体的な取り組みを提案し促進していくことが動物保護団体としての義務であると思っています。本事業を通じてより多くの方に人と動物が共生する社会のあるべき姿を考えるきっかけとなり、目指す社会への実現へと進む大きな一歩となることを期待しています。
安野 舞子 氏
横浜国立大学 高大接続・全学教育推進センター 准教授
[プロフィール]
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教育学大学院よりPh.D.(Education)。元々の専門分野は高等教育だが、近年、「人と動物の関係学」の分野でも研究を始め、「大学生のメンタルヘルスケアに有効な動物介在プログラムの構築」、「高齢者と伴侶動物の福祉を連携させるサポート・システムの構築」をテーマに国から補助金(科研費)を得て、「人と動物の幸せな共生社会」の実現に向けた調査研究活動を行っている。
[コメント]
「業界健全化の責務を果たす」との決意のもと、AHB様が本プログラムを立ち上げると伺い、心から嬉しく思いました。犬猫を飼う時に、多くの方がペットショップから購入するこの社会において、店頭にいる目の前のあどけない子犬・子猫の親達に、どれだけの方が思いを馳せているでしょうか。また、店頭には並ぶことのない犬猫の存在に、どれだけの方が気づいているでしょうか。このAHB様による繁殖を引退する犬猫、販売に適さない犬猫を対象とした取り組みは、「そのような犬猫達がいる」ということを私達に知らしめると共に、「いかなる命も、生み出した以上、最後まで共に幸せに暮らせるようにする」という我々人間の責務を促す、大切な機会だと思っています。
■ファシリテーター
水谷 香織 氏
パブリック・ハーツ株式会社 代表取締役
[プロフィール]
2003年岐阜大学大学院工学研究科博士後期課程修了、学位(博士(工学))取得。日本学術振興会特別研究員を3年間務めた後、2006年社会的合意形成を専門とするパブリック・ハーツ株式会社を設立。インフラ、エネルギー、福祉、医療、教育等多様な分野で、合意形成のコンサルティング、ファシリテーション、研修、研究開発を行う。岐阜大学客員准教授。
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