ガンガゼの生息域ヒートマップおよび藻場の生育状況確認の実証実験に成功
~「海の見える化」に向け、水中映像を軸とした洋上IoT/AIプラットフォームを構築~
株式会社MizLinx(以下 MizLinx)、株式会社LAplust(以下 LAplust)、公益財団法人ながさき地域政策研究所(以下 ながさき地域政策研究所)、株式会社NTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)は、長崎県五島市と連携し「水中映像を軸とした洋上IoT/AIプラットフォーム構築による持続可能な漁業の実現」を目的としたガンガゼ※1の生息域ヒートマップおよび藻場※2の生育状況確認の実証実験(以下 本実証実験)に成功しました。
なお、本実証実験は、総務省の「令和6年度 地域デジタル基盤活用推進事業(実証事業)」※3に採択されて実施しています。
1.背景と目的
五島市では、ガンガゼをはじめとする植食動物※4による海藻の食害が原因で磯焼け※5が発生し漁獲量が減少しています。磯焼け対策としては、植食動物を除去することが重要ですが、駆除をするための人手が不足しており、植食動物を除去のための潜水作業を多く行うことができません。そのため、潜水することなく海中の植食動物の生息状況・海藻の生育状況の把握を行い、適切なタイミングで潜水作業を行うことが求められています。
また、定置網漁においては、収益改善に向けた出漁の効率化や高単価魚種の漁獲量向上ができておらず、長期的に持続可能な漁業運営が困難という課題が存在しています。この課題においても定置網内の魚介類量が把握できること、かつ出漁することなく遠隔地から把握できることが必要です。
これらの課題を解消するため、水中カメラによる海中の映像撮影からデータ管理・可視化の提供をワンパッケージで行う「洋上IoT/AIプラットフォーム」を構築し、海の中の状況を把握することで、「海の見える化」の実現をめざします。
2.概要および成果
本実証実験では、以下の2つの実証実験に成功しました。
(1)ガンガゼの生息域をヒートマップの形式にて表示
「MizLinx Monitorハンディタイプ※6」を使用して撮影された映像をもとに画像認識AIを用いてガンガゼを特定し、生息域をヒートマップの形式にて表示させることに成功しました。
これにより、潜水の場所が絞れることができ、潜水回数の削減とガンガゼ探索時間の短縮が見込まれるとともに、磯焼け対策を実施する面積を広げることが可能になります。
<「MizLinx Monitor ハンディタイプ」の利用イメージ図>
<ガンガゼヒートマップのイメージ図>
(2)「MizLinx Monitor ブイタイプ※7」を利用した藻場の生育状況の確認
新たにMizLinxが開発した「MizLinx Monitor ブイタイプ」にて海底で固定設置された水中カメラの映像を一定時間おきにクラウドに送信し、遠隔地から藻場の生育状況の確認に成功しました。
これにより、藻場の常時監視ができ、植食動物による食害の発生を発見し、対処を打つことができます。
<「MizLinx Monitor ブイタイプ」の利用イメージ図>
3.各社の役割
■MizLinx
本実証実験の実施、「MizLinx Monitor ハンディタイプ」、「MizLinx Monitorブイタイプ」の開発
■LAplust
本実証実験の支援、画像認識AI(「LA-Eye※8」)を用いた動画像解析および海のヒートマップ作成
■ながさき地域政策研究所
本実証実験の支援、磯焼けに関する課題の整理
■NTT Com
本実証実験の支援、通信環境の提供、本実証実験の環境構築
4.今後の展開
今後、4者は、使用した機材の商品・サービス化を進めていき、全国への水平展開をはかります。
また、AIによる画像認識精度を向上させ、ガンガゼだけでなく魚種や海藻の判定を可能にし、海の見える化を行い、海の保全と利活用を促進するなど、新たに海の価値を生み出す「うみうみプロジェクト」を始動させます。
このような取り組みを通じ、環境保全と経済発展を両立し、持続可能な成長ができる未来の水産業への貢献をめざします。
※1:ガンガゼとは、海藻を餌とするウニの一種です。
※2:藻場とは、海藻が生い茂る場所のことです。
※3:「令和6年度 地域デジタル基盤活用推進事業(実証事業)」とは、総務省が「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けて、地方公共団体等によるデジタル技術を活用した地域課題解決の取組を総合的に支援する事業のことです。詳細は以下をご参照ください。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000960182.pdf
※4:植食動物とは、生きている植物を主な食物とする動物のことです。海洋生物では、ガンガゼなどのウニが代表的な植食動物です。
※5:磯焼けとは、藻場において、海藻が著しく減少・消失し、海藻が繁茂しなくなる現象をさします。これにより、アワビやサザエなどの生物が減少し、沿岸漁業に大きな打撃を与えます。
※6:「MizLinx Monitorハンディタイプ」とは、船上からダイバー不要で海底近くの360度映像を撮影し、詳細な状況を簡単に把握することができる観測システムです。
※7:「MizLinx Monitor ブイタイプ」とは、水中カメラや水質センサをIoT化し、現場に行かずに継続的な海洋モニタリングを可能とするスマートブイを中心とした観測システムです。
※8:「LA-Eye」とは、LAplustが開発した、少量の学習データでユーザーの目的に特化した高精度な動画像解析AIモデルを作成できるソフトウェアです。