一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、企業が抱える研究・開発やイノベーションにおける課題や現状を明らかにし、今後の経営方針の策定や戦略立案、研究・開発部門のマネジメント施策の検討に資する情報をご提供することを目的として、全国主要企業の研究・開発部門のご責任者の方々(CTO:最高技術責任者)を対象に、『日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査(CTO Survey 2020)』を実施いたしました。
調査結果の主要なポイントは以下のとおり。
1. CTOが重視する課題は「経営戦略・事業戦略との一貫性ある研究・開発テーマの設定」
~経営トップは「研究・開発部門の人材獲得・育成」「デジタル技術の活用」の重視度がより高い
2. 求められる「新事業開発への貢献」
~大企業では、「デジタルトランスフォーメーション(DX)への貢献」「SDGs・社会課題解決を意識した研究・開発」がより期待される
3. 研究開発投資:「中長期的な競争力を維持していくためには十分ではない」が半数
~強化している投資分野は「新規事業に関する商品・サービス開発」
4. 約半数の企業がCTOを任命
~望まれる業務経験として挙げられた「経営戦略・事業企画部門」「マーケティング部門」と現状にギャップ
5. オープンイノベーションの成果:「成果をあげている」と「成果をあげていない」が拮抗
~「国内外ベンチャー企業」「海外大学・研究機関」との連携に課題
6. 研究・開発における高成果企業の傾向
~「十分な研究開発投資」「マーケティングとの連携」「組織風土」「CTOの業務経験」等に違いあり
■「CTO Survey 2020日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査」概要
調査時期 :2020年1月22日~2月14日
調査対象 :JMAの開発・技術部門評議員会社ならびに
CTOフォーラム参加企業、およびサンプル抽出した
全国主要企業の研究・開発部門のご責任者(計2,279社)
調査方法 :郵送調査法(質問票を郵送配布し、
郵送およびインターネットにより回答)
回答数・回収率:回答数244社・回答率10.7%
(回答企業の概要は下部に記載)
1. CTOが重視する課題は「経営戦略・事業戦略との一貫性ある研究・開発テーマの設定」
~経営トップは「研究・開発部門の人材獲得・育成」「デジタル技術の活用」の重視度がより高い
・研究・開発部門で重視する課題を尋ねたところ、「経営戦略・事業戦略との一貫性ある研究・開発テーマの設定」(54.1%)、「研究・開発成果の製品化・事業化率の向上」(45.5%)、「オープンイノベーションの推進」(35.7%)が上位に挙げられた(【図1-1】)。
・2019年度にJMAが経営トップを対象に実施した調査(経営課題調査)の同設問の結果と比較すると、CTOの方が重視度が高い項目は「経営戦略・事業戦略との一貫性ある研究・開発テーマの設定」「研究・開発成果の製品化・事業化率の向上」。一方、経営トップの方が重視度が高い項目は「研究・開発部門の人材獲得・育成」「デジタル技術の活用」「ベンチャー企業等に対する出資・M&A」であった。(【図1-2】)
【図1-2】研究・開発部門で現在、特に重視している課題(経営課題調査との比較)
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_2.png
2. 求められる「新事業開発への貢献」
~大企業では、「DXへの貢献」「SDGs・社会課題解決を意識した研究・開発」がより期待される
・研究・開発部門の現状について尋ねたところ、「新事業開発への貢献が求められている」について、「かなり当てはまる」「当てはまる」とする比率が約6割にのぼっている(【図2-1】)。従業員規模別に比較すると、特に、従業員数3,000人以上の大企業の方が当てはまる傾向が強かった。(【図2-2】)。
・その他、従業員数3,000人以上の大企業では、「自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)への貢献が求められている」「SDGsや社会課題解決を意識した研究・開発を行っている」について、「当てはまる」とする比率が、他の従業員規模数の企業と比べ、高い傾向が見られた(【図2-2】)。
【図2-1】研究・開発部門の状況
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_3.png
【図2-2】研究・開発部門の状況(従業員規模別の比較)
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_4.png
3. 研究開発投資:「中長期的な競争力を維持していくためには十分ではない」が半数
~強化している投資分野は「新規事業に関する商品・サービス開発」
・中長期的な競争力を維持していくために十分な研究開発投資が行われているかについて尋ねたところ、「そう思わない」(あまり~まったくの合計)が50.7%と半数に達した(【図3-1】)。
背景として、日本の景気が停滞していることや、直近の収益性向上を優先している企業が多いのではないかと推察される。
・研究開発投資の3年前と比べた現状について尋ねたところ、「新規事業に関する商品・サービス開発」について、約4割が「増加」と答えている(【図3-2】)。また、3年後の見通しについては、「増加」が半数超となっている(【図3-3】)。
【図3-1】中長期的な競争力を維持していくために十分な研究開発投資が行われているか
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_5.png
【図3-2】研究開発投資について、3年前と比べた現在の状況
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_6.png
【図3-3】研究開発投資について、現在と比べた3年後の見込み
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_7.png
4. 約半数の企業がCTOを任命
~望まれる業務経験として挙げられた「経営戦略・事業企画部門」「マーケティング部門」と現状にギャップ
・CTO(最高技術責任者)の任命状況を尋ねたところ、「専任で任命されている」が17.6%、「他の役職との兼務で任命されている」が27.9%となり、約半数の企業がCTOを任命していることが分かった。従業員数3,000人以上の大企業では55.3%と半数を超えている(【図4-1】)。
・CTOとなるうえでの業務経験について尋ねたところ、現任のCTOの業務経験としては「本社の研究・開発部門」(73.9%)、「商品開発部門」(50.5%)、「ビジネスユニットの研究・技術部門」(48.6%)の比率が高かった。一方で、本来望まれる業務経験と比較すると、「経営戦略・事業企画部門」「マーケティング部門」について、現状との差異が大きかった(【図4-2】)。
・また、CTOに求められる業務について、現状と今後の重要度が高まるものを比較すると、「SDGsや社会課題解決に資する研究・開発活動の推進」「全社的なイノベーション戦略の策定・実行」の重要度が今後高まるという結果が見られた(【図4-3】)。
【図4-1】CTOの任命状況(全体・従業員規模別の比較)
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_8.png
【図4-2】現任のCTOのこれまでの業務経験
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_9.png
【図4-3】現任のCTOが管掌している業務と、今後重要度が高まると思われる業務
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_10.png
5. オープンイノベーションの成果:「成果をあげている」と「成果をあげていない」が拮抗
~「国内外ベンチャー企業」「海外大学・研究機関」との連携に課題
・オープンイノベーションの取り組みの成果状況を尋ねたところ、全体では「成果をあげている」(大いに~ある程度の合計)が38.1%であるのに対し、「成果をあげていない」(あまり~まったくの合計)が36.9%となり、拮抗する結果となった。従業員数3,000人以上の大企業では、「成果をあげていない」が46.3%と、「成果をあげている」の44.8%よりも多かった(【図5-1】)。
・社外の各機関との連携状況を尋ねたところ、「国内顧客」「国内大学・研究機関」「国内調達先」については、「十分に連携できている」「連携できている」とする比率が高かった一方、「国内ベンチャー企業」「海外ベンチャー企業」「海外大学・研究機関」については、「連携できていない」「まったく連携できていない」とする比率が高かった(【図5-2】)。
【図5-1】オープンイノベーションの取り組みの成果状況(従業員規模別の比較)
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_11.png
【図5-2】研究・開発部門と社外の各機関との連携状況
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_12.png
6. 研究・開発における高成果企業の傾向
~「十分な研究開発投資」「マーケティングとの連携」「組織風土」「CTOの業務経験」等に違いあり
「研究・開発部門は経営トップの期待に応えられているか」、「自社の中長期的な競争力の向上に寄与できているか」、「自社の技術力は競合企業よりも優位な状況にあるか」の各設問に対し、全て回答があった企業240社を「高成果群」(49社)、「中成果群」(137社)、「低成果群」(54社)に区分し分析を行ったところ、以下の傾向が見られた。
・「中長期的な競争力を維持していくために十分な研究開発投資が行われてるか」について、「高成果群」は「そう思う」(強く~ややの合計)が75.6%であるのに対し、「中成果群」は47.5%、「低成果群」は22.3%となっている(【図6-1】)。
・「研究・開発部門で特に重視している課題」のうち「研究・開発とマーケティングの連携」について、「高成果群」では42.9%であるのに対し、「中成果群」は27.0%、「低成果群」は29.6%となっている(【図6-2】)。
・「組織風土の傾向」のうち、特に、「『出る杭』や『とがった人材』が尊重され、活躍できている」「会社の理念や価値観が浸透し、社員の日々の行動に現れている」「お互いに刺激し合っている」について、「高成果群」と「低成果群」の「当てはまる」とする比率の差異が大きかった(【図6-3】)。
・「今後重要性が高まるCTOの業務」のうち、「自社の事業のデジタルトランスフォーメーションへの技術面からの貢献」「将来的に成果を生み出す可能性のある基礎的な研究・開発の推進」「研究・開発におけるデジタル技術活用の推進」「既存の事業や商品・サービスに必要な研究・開発の推進」について、「高成果群」の方が「重要度が高まる」とする比率が高かった(【図6-4】)。
・「現任のCTOのこれまでの業務経験」のうち「商品開発部門」について、「高成果群」では70.8%であるのに対し、「中成果群」は46.0%、「低成果群」は43.5%、というように大きな開きが見られた(【図6-5】)。
【図6-1】競争力を維持していくために十分な研究開発投資が行われているか(成果群別の比較)
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_13.png
【図6-2】研究・開発部門で現在、特に重視している課題(成果群別の比較)
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_14.png
【図6-3】研究・開発部門の組織風土の傾向(成果群別の比較)
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_15.png
【図6-4】今後重要性が高まると思われるCTOの業務(成果群別の比較)
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_16.png
【図6-5】現任のCTOのこれまでの業務経験(成果群別の比較)
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■調査結果を受けてのコメント
本調査を通して、研究・開発部門の責任者の半数が、自社の中長期的な競争力の維持のために十分な研究開発投資が行われていると思えないと回答していることは、懸念すべきことです。他方で、研究・開発において高い成果を出している企業群では、十分に投資がされているとする比率が多数を占めているという結果も出たことを鑑みると、研究・開発部門の責任者であるCTOが、経営の意思決定により深く関与していく必要があるのではないでしょうか。
また、研究開発事業において、自前主義からの脱却を目指すも、外部への投資配分の道筋をうまくつけられていない、もしくは思惑通りに進められていない結果、継続や新規投資に慎重にならざるを得ない経営判断が、背景に見え隠れします。CTO自ら、投資の必要性を裏付けるエビデンスと戦略をより明確に示していくことが、今後より一層求められているのではないかと考えられます。
■回答企業の概要
業種
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_18.png
従業員数
https://www.atpress.ne.jp/releases/210937/img_210937_19.png
売上高・売上高に占める研究開発費の比率
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